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アーキテクト・イン・シネマ 〜映画に観る建築・住まい・家族〜

海街diary
  • モンテ・クリスト−巌窟王
  • 『モンテ・クリスト−巌窟王』
  • ■発売日:発売中
  • ■発売・販売元:ポニーキャニオン
  • ■価格:\3,800+税
  • 監督:ケヴィン・レイノルズ
  • 出演:ジム・カヴィーゼル ガイ・ピアーズ ダグマーラ・ドミンスク
    リチャード・ハリス ルイス・ガスマン 他
 

(C)BUENA VISTA PICTURES DISTRIBUTION and SPYGLASS ENTERTAINMENT GROUP,LP

パワーズコート (アイルランド)

アイルランド随一の美しさを誇る旧子爵の邸宅と庭園


パワーズコート(アイルランド)

(C)spectrumblue

友人に裏切られ、無実の罪で13年もの間幽閉された男の復讐劇を描いたアレクサンドル・デュマ原作の「モンテ・クリスト伯」。脱獄しモンテ・クリスト伯爵として新たな一歩を踏み出したエドモンが、招待客を前に気球に乗って現れる場面は鮮烈な印象を残しますが、その彼の邸宅として撮影されたのが世界で最も美しい庭園のひとつに挙げられるパワーズコートです。

アイルランドの首都ダブリンから南に下った風光明媚(めいび)なウィックローにあるパワーズコートは、かつてパワーズコート子爵が有した広大な屋敷と、47エーカー(約5万8000坪)もの庭園からなる観光名所。見晴らしのよい丘の頂上に建つ石造りの邸宅はもともと13世紀に建てられた城で、その後、レンスター・ハウスを手掛けたドイツの建築家リチャード・キャッスルが1731年から10年の歳月をかけて改築したもの。パラーディオ建築を基本に、両サイドにバロックのドームを冠した建物は重厚な雰囲気を醸し出しています。1974年に火災で邸内の大部分が焼失したものの、1996年に再建。アイルランドの老舗毛織ブランド・アヴォカ手織工場社のレストランなどが入る複合施設として生まれ変わりました。

このパワーズコートで特筆すべきは雄大なウィックロー山脈を借景にした広大な庭園です。ベルサイユ宮殿やウィーンのシェーンブルン宮殿などにインスパイアされた庭園は、およそ20年の歳月をかけて1880年に完成。劇中にも登場したトリトンレイクまで続くイタリア式庭園をはじめ、日本庭園、翼のある馬の彫像、ペット墓地、ドルフィンの池、生垣に囲まれた庭園など、特色ある景色は見応え満点。スタンリー・キューブリック監督の『バリー・リンドン』では、焼失前のパワーズコートの姿が見られるのでこちらと比べてみるのも一興です。

復讐こそ、わが人生。 ■Introduction

原作は1844年から1846年にかけて当時のフランスの大手新聞「デバ」紙に連載された、文豪アレクサンドル・デュマによる小説「厳窟王」。また、同じく1844年から1846年にかけて18巻の本としても出版されている。そんな名作を映画化させたのは『ロビン・フッド』などで知られるアメリカの監督、ケヴィン・レイノルズ。主人公の貧しい青年エドモン・ダンテスを演じたのは、『シン・レッド・ライン』のジム・カヴィーゼル。エドモンの裕福な親友フェルナン・モンデーゴを、『メメント』『タイムマシン』などで高い評価を得たガイ・ピアーズが演じている。さらに、惜しまれつつ2002年に亡くなった『ハリー・ポッター』の校長先生役でおなじみのリチャード・ハリスなど、演技派の名優たちが脇を固める。

■Story

時は1814年、港町マルセイユに住む航海士のエドモン(ジム・カヴィーゼル)は、伯爵の子息フェルナン(ガイ・ピアーズ)と幼なじみ。やがて一等航海士となったエドモンには、フェルナンもうらやむほど美しい婚約者メルセデス(ダグマーラ・ドミンスク)がいたが、ある日、何者かの陰謀によって、無実の罪でイフ島の牢獄に幽閉されてしまう。エドモンの13年におよぶ幽閉生活を支えたのは、永遠の愛を誓った女性メルセデスへの一途な想いだった。目に見えぬ敵への殺意を抱き、見事、脱出したエドモンは、身も心も大変身を遂げ、“モンテ・クリスト伯”となってパリの社交界へ乗り込む。しかし、そこでエドモンが知るのは、メルセデスが親友フェルナンと結婚したという過酷な事実だった。

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ムーンライズ・キングダム
  • アリスのままで
  • 『アリスのままで』
  • ■発売日:発売中
  • ■発売元:キノフィルムズ
  • ■販売元:ポニーキャニオン
  • ■価格:¥3,800円+税
  • 監督:リチャード・グラッツァー ウォッシュ・ウェストモアランド
  • 出演:ジュリアン・ムーア アレック・ボールドウィン
    クリステン・スチュワート ケイト・ボスワース
    ハンター・パリッシュ 他
 

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残酷な運命に向き合う女性と家族の闘い

これは1人の女性の喪失の物語です。本作で第87回アカデミー賞・主演女優賞を受賞した、ジュリアン・ムーアこん身の演技は胸が締め付けられるような痛みをもたらしながら人間の在り方を強烈に提示します。

高名な言語学者であり名門大学の教授として輝かしいキャリアを持つアリスは、夫と成人した子供たちとの関係も良好、まさに人生の充実期を迎えていました。しかし、講演で言葉が抜け落ちたのをきっかけに、50歳という若さで遺伝性の若年性アルツハイマー病を発症したことを知ります。

やがてすべての記憶を失うという残酷な運命を宣告されたアリス。言語を専門にする者が言葉を失うということ、近い将来自分の愛する者の名前も、そして自分自身さえもわからなくなっていくこと。「人生を捧げてきたことが何もかも消える」という恐怖との闘いと、愛する我が子にも同じ運命を背負わせてしまうかもしれないという罪悪感にさいなまれながら、日々を懸命に生きるアリスの姿をカメラは冷徹に見つめ続けていきます。

カットが変わると病状の進行も一目瞭然(りょうぜん)なのがなんともやるせないですが、アリスと向き合う家族たちの変化も静かに描写されています。美しく聡明だった妻の変化に戸惑いを隠せない夫、母に複雑な思いをにじませながら自身も母となることを決意した長女のアナ、心配しつつもどこか他人事の長男トム、そんな中、家族の落ちこぼれであり常にアリスと対立していた次女リディアの存在は、暗闇を進む一家を照らす一筋の光となります。

監督のリチャード・グラッツァーは、持病のALS(筋委縮性側索硬化症)と闘いながら本作を完成させましたが、惜しくも昨年の3月10日に帰らぬ人となりました。クラッツァー氏の万感の思いが込められたアリスのスピーチは、涙なくしては語れない名シーンです。

もうすぐ私はすべてを忘れる。けれども愛した日々は、消えはしない。 ■Introduction

若年性アルツハイマーの女性が記憶を失っていく日々をつづった世界ベストセラー小説「アリスのままで」を映画化。主演は、今作で第87回アカデミー賞主演女優賞を受賞し、世界三大国際映画祭の女優賞を制覇した世界的演技派女優のジュリアン・ムーア。共演に『ミッション:インポッシブル ローグ・ネイション』のアレック・ボールドウィン、『トワイライト』シリーズのクリステン・スチュワートら豪華演技派俳優がそろった。監督を務めたリチャード・グラッツァーは、自身もALS(筋委縮性側索硬化症)と闘病中で、アリスの心境に細やかに分け入った。

■Story

高名な言語学者として敬われ、ニューヨークのコロンビア大学の教授を務めるアリス(ジュリアン・ムーア)は、50歳になったその日、優しい夫(アレック・ボールドウィン)や3人の愛する子供たちと共に最高の誕生日を迎えていた。ところが、そんなアリスに異変が起きる。UCLAに招かれて講演中に、突然、言葉が頭から抜け落ちたのだ。物忘れを頻繁にするようになったアリスは脳の検査を受け、若年性アルツハイマー病を宣告される。大学も辞め、記憶をなくす恐怖と闘いながら毎日を送るアリスは、パソコンを操作していてある映像を見つける。「アリス、私はあなたよ。大事な話があるの」と始まった、かつての自分から今の自分へ送られた“アリスのままで”いるためのメッセージとは―?

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