マリーナシティ(シカゴ〜アメリカ)
都市の生活様式を変えた独創的な建物
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世界最古の鉄骨高層ビルやアール・デコ建築に加え、フランク・ロイド・ライトやミース・ファン・デル・ローエが手掛けた近代建築など、異なる時代の建築が建ち並ぶアメリカ第三の都市シカゴ。ここは町全体が“建築博物館”ともいわれるほど多彩な建築が見られる、建築好きにはたまらない場所です。中でもひときわ異彩を放っているのが、トウモロコシの芯を思わせるマリーナシティです。
1964年に完成したマリーナシティは、近代建築三大巨匠の一人であるミース・ファン・デル・ローエの下で学んだバートランド・ゴールドバーグが設計しました。一度見たら忘れられない革新的なデザインの2棟は、当時主流だった鉄骨造ではなく、円と曲線で構成されたコンクリート造。駐車場を大胆に見せたデザインは、郊外のガレージ付き一戸建て住宅が主流だったなか、都市型集合住宅の概念を変えたといわれています。高さおよそ179m、地下1階、地上64階建ての2棟のビルは世界初の円形住宅であり、劇場やレストランなどが入った世界初の複合ビル。それぞれ3〜19階は駐車場、20階にはランドリーや居住者用の倉庫、会議室、フィットネスルームなどが完備され、21〜60階部分には居住用アパートメントが入っています。また、61階は送迎デッキ、62〜64階はペントハウスとなっています。
伝説のバウンティ・ハンター、ラルフ・“パパ”・ソーソンの活躍を描いたスティーブ・マックイーンの遺作『ハンター』では、マックイーン扮するソーソンに追い詰められた犯人の車がハンドル操作を誤り、このマリーナシティ駐車場の15階から目の前のシカゴ川に飛び込むシーンが撮影されました。その迫力あるシーンはこの映画一番の見どころとなっています。
獲物は人間!!
■Introduction
1980年にスティーブ・マックィーン主演で製作されたアクション映画。マックィーンの才能が遺憾なく発揮されている本作は、惜しくも彼の遺作となった。監督は『愛のメダリスト』のバズ・キューリック。マックィーンが演じたのは、30年間に5000人以上もの仮釈放中の逃亡者を刑務所に送り込んだといわれる実在の賞金稼ぎ、ラルフ・“パパ”・ソーソン。人間くさい男ソーソンの危険に満ちた半生を、マックィーンが自身の人間味あふれる魅力で好演している。
■Story
保釈中に失踪した逃亡者を非情なまでに追いかけ、何人も捕まえてきたソーソン(スティーブ・マックィーン)。たとえ保安官の甥(おい)であろうとも容赦はしない。しかし、家へ帰れば信頼する仲間たちから“パパ”と呼ばれ、古いおもちゃを収集し、妊娠中の恋人ドティー(キャサリン・ハロルド)のためには嫌々ながらラマーズ法教室へも通う人間くさい男であった。ところが、いつもは追いかける側のソーソンをしつこく付け狙い、復讐(ふくしゅう)心に燃える男がいた。そしてその男の魔の手は、愛するドティーにまで伸びてきたのであった。

パステルカラーの中身は努力+根性+ときめき
ベビーピンクの額×グレーの壁、ピンクのタイプライターを前ににっこりとほほ笑むワンピース姿の女の子。“ガーリー度”高めなメインビジュアルとは裏腹に、本作は実際に行われていた「タイプ早打ち大会」をモデルにした、汗と涙の青春映画でもあります。
フランスの女性たちが社会に進出していった1950年代末。1週間の試用採用で憧れの秘書になれたものの、すぐにクビを宣告されてしまったローズは、上司のルイに正式採用の条件としてタイプの早打ち大会優勝を提案されます。タイプの特訓のため、郊外にある「『風と共に去りぬ』みたい」なルイの一軒家に下宿することになったローズは、赤いタータンチェック模様の壁にオードリー・ヘップバーンやマリリン・モンローなど憧れの人の切り抜きを貼り、いつか自分も…と夢を膨らませます。指使いの矯正、難解な古典のタイプ、ピアノレッスン、ジョギングなど、『ロッキー』並みのストイックな特訓を経て才能を開花させていくローズ。オードリー・へプバーン扮する『マイ・フェア・レディ』のイライザのように、田舎娘がどんどん洗練されていく物語はいつの世も女性の胸を高鳴らせてくれます。
キュートなファッション、シックなインテリア、スパイスの効いた小道具など、ヴィヴィッドカラーとパステルカラーが絶妙に調和した『タイピスト!』が魅せる“カワイイ”世界は、女子のおしゃれ心を大いに刺激してくれますが、本作の監督を務めたレジス・ロワンサルは自他共に認める、大の“シネフィル(映画通)”。劇中、ヌーヴェル・バーグの旗手ジャン=リュック・ゴダールやフランソワ・トリュフォーをはじめ、“サスペンス映画の神様”といわれるアルフレッド・ヒッチコックなど数々の名作にオマージュを捧げています。映画通の方はぜひ、ガーリーな世界にどんな名作が隠れているのか、探しながらお楽しみください。
マドモワゼルのド根性、見せてあげる。
■Introduction
『アーティスト』『オーケストラ!』の製作スタッフによる“スポ根”サクセスエンターテインメント。1950年代のフランスを舞台に、当時、一大競技であった「タイプライター早打ち大会」に挑むヒロインの奮闘と恋が、当時のカルチャーとファッション満載に描かれている。監督を務めたのは自他共に認める“シネフィル”である、レジス・ロワンサル。アルフレッド・ヒッチコック、ビリー・ワイルダー、ダグラス・サーク、ジャック・ドゥミ、フランソワ・トリュフォー、ジャン=リュック・ゴダール、ミケランジェロ・アントニオーニなど、50年〜60年代のアメリカ、フランス、イギリスにおける名作映画へオマージュをささげている。
■Story
都会暮らしに憧れて田舎から出てきたローズ(デボラ・フランソワ)は、保険会社を経営するルイ(ロマン・デュリス)の秘書に応募。晴れて採用されるも、不器用なローズは1週間でクビを言い渡されてしまう。しかし、ローズに「タイプの早打ち」の才能があることを見出したルイは、彼女と組んで世界大会で優勝するという野望を抱く。その日からルイのコーチ魂に火が付き、地獄の特訓が始まった。“1本指打法”から10本指への矯正、難解な文学書のタイプ、ピアノレッスン、ジョギング、心理戦の特訓・・・。厳しい訓練を乗り越えて、めきめきと才能を開花させていくローズであったが―。
