ドイツ連邦議会議事堂(ベルリン〜ドイツ)
歴史に翻弄された政治の中枢

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ベルリンの広告代理店を舞台に、出世や愛を巡る女性たちの激しい攻防を描いたレイチェル・マクアダムス&ノオミ・ラパス主演の『パッション』。本作はフランス映画『ラブ・クライム 偽りの愛に溺れて』のリメイクですが、長回しや“POV”と呼ばれるカメラの視線と登場人物の視線を一致させるようなカメラワークを駆使するなど、ブライアン・デ・パルマ監督ならではの、けれん味たっぷりの映像で女性たちの嫉妬渦巻く世界を怪しく描き出しています。
ノオミ・ラパス演じるイザベルのオフィスからちらりと見えるドームを冠した建物が、ドイツの政治を司るドイツ連邦議会議事堂、“ライヒスターク”です。1894年、帝政ドイツ時代に第二帝国議会議事堂として建てられたライヒスタークは、建築家パウル・ヴァロットにより10年の歳月をかけて造られました。ネオ・ルネサンス様式の堂々たる建物の頂にあるドームは鉄とガラスを組み合わせたもので、当時の最先端技術が使われました。しかし1933年、不審火により炎上。この事件を境に、ライヒスタークは歴史に踊らされることになります。
この炎上で実権を握ったアドルフ・ヒトラー率いるナチス党が独裁体制を確立すると、議事堂としての機能を失ったライヒスタークはそのまま放置され、第二次世界大戦ではさらに激しい損壊を受けます。その後、東西ドイツの分断、ベルリンの壁崩壊を経てこの建物がよみがえったのは、1999年のこと。“ガーキン”の愛称で知られるイギリスの超高層ビル「30セント・メリー・アクス」や、香港を代表する超高層建築「香港上海銀行・香港本店ビル」などを設計したイギリスの建築家ノーマン・フォスター卿が、ファサードを残して再建。軽量のガラスとアルミニウムでできたドームが66年の時を経て再び姿を現しました。らせん階段が組まれたドーム内部は、階下にある議場が見える構造で、国民は議会の様子を注視できるようになっています。破壊と再生という波乱に満ちた軌跡を経てよみがえったライヒスタークは、ドイツの歴史の証人であり、また今日の民主主義のシンボルでもあるのです。
女の敵は、女。
■Introductionリュディビーヌ・サニエ&クリスティン・スコット・トーマス主演で女同士の嫉妬や殺意を描いた、フランスのアラン・コルノー監督作品『ラブ・クライム 偽りの愛に溺れて』をリメイクしたミステリーサスペンス。『スポットライト 世紀のスクープ』でアカデミー助演女優賞に初ノミネートされたレイチェル・マクアダムスと、『ミレニアム』3部作のヒロイン・リスベット役でブレイクしたノオミ・ラパスがW主演を果たす。監督は『ファントム・オブ・パラダイス』などで知られる巨匠、ブライアン・デ・パルマ。
■Storyクリスティーン(レイチェル・マクアダムス)は野心を隠さず、ずる賢さと大胆な行動を武器に、国際的な広告会社の重役へと上り詰めた。アシスタントであるイザベル(ノオミ・ラパス)は、そんなクリスティーンに対して当初は憧れを抱いていたが、手柄を奪われ、同僚の前で恥辱を受け、彼氏には裏切られ…。それらすべてにおいてクリスティーンが裏で糸を引いていたと知ったとき、殺意が芽生え、ついにクリスティーンの殺害を決意する。しかし、その計画は自分自身が不利になるような証拠を構築した矛盾に満ちたものだった。実行の日、クリスティーンは誘惑を示唆するような招待状を受け取る。相手は不明だが、サプライズを好むクリスティーンは自宅の寝室で裸になり、この秘密の愛人との出会いを心待ちにするのだが…。