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アーキテクト・イン・シネマ 〜映画に観る建築・住まい・家族〜

パッション
  • パッション
  • 『パッション』【おトク値!】DVD
  • ■発売日:発売中
  • ■発売元:ブロードメディア・スタジオ
  • ■販売元:ポニーキャニオン
  • ■価格:¥1,800+税
  • 監督:ブライアン・デ・パルマ
  • 出演:レイチェル・マクアダムス ノオミ・ラパス
    カロリーネ・ヘルフルト ポール・アンダーソン 他
 

(C) 2012 SBS PRODUCTIONS - INTEGRAL FILM - FRANCE 2 CINEMA

ドイツ連邦議会議事堂(ベルリン〜ドイツ)

歴史に翻弄された政治の中枢


ドイツ連邦議会議事堂(ベルリン〜ドイツ)

(C)rabbit75_fot

ベルリンの広告代理店を舞台に、出世や愛を巡る女性たちの激しい攻防を描いたレイチェル・マクアダムス&ノオミ・ラパス主演の『パッション』。本作はフランス映画『ラブ・クライム 偽りの愛に溺れて』のリメイクですが、長回しや“POV”と呼ばれるカメラの視線と登場人物の視線を一致させるようなカメラワークを駆使するなど、ブライアン・デ・パルマ監督ならではの、けれん味たっぷりの映像で女性たちの嫉妬渦巻く世界を怪しく描き出しています。

ノオミ・ラパス演じるイザベルのオフィスからちらりと見えるドームを冠した建物が、ドイツの政治を司るドイツ連邦議会議事堂、“ライヒスターク”です。1894年、帝政ドイツ時代に第二帝国議会議事堂として建てられたライヒスタークは、建築家パウル・ヴァロットにより10年の歳月をかけて造られました。ネオ・ルネサンス様式の堂々たる建物の頂にあるドームは鉄とガラスを組み合わせたもので、当時の最先端技術が使われました。しかし1933年、不審火により炎上。この事件を境に、ライヒスタークは歴史に踊らされることになります。

この炎上で実権を握ったアドルフ・ヒトラー率いるナチス党が独裁体制を確立すると、議事堂としての機能を失ったライヒスタークはそのまま放置され、第二次世界大戦ではさらに激しい損壊を受けます。その後、東西ドイツの分断、ベルリンの壁崩壊を経てこの建物がよみがえったのは、1999年のこと。“ガーキン”の愛称で知られるイギリスの超高層ビル「30セント・メリー・アクス」や、香港を代表する超高層建築「香港上海銀行・香港本店ビル」などを設計したイギリスの建築家ノーマン・フォスター卿が、ファサードを残して再建。軽量のガラスとアルミニウムでできたドームが66年の時を経て再び姿を現しました。らせん階段が組まれたドーム内部は、階下にある議場が見える構造で、国民は議会の様子を注視できるようになっています。破壊と再生という波乱に満ちた軌跡を経てよみがえったライヒスタークは、ドイツの歴史の証人であり、また今日の民主主義のシンボルでもあるのです。

女の敵は、女。

■Introduction

リュディビーヌ・サニエ&クリスティン・スコット・トーマス主演で女同士の嫉妬や殺意を描いた、フランスのアラン・コルノー監督作品『ラブ・クライム 偽りの愛に溺れて』をリメイクしたミステリーサスペンス。『スポットライト 世紀のスクープ』でアカデミー助演女優賞に初ノミネートされたレイチェル・マクアダムスと、『ミレニアム』3部作のヒロイン・リスベット役でブレイクしたノオミ・ラパスがW主演を果たす。監督は『ファントム・オブ・パラダイス』などで知られる巨匠、ブライアン・デ・パルマ。

■Story

クリスティーン(レイチェル・マクアダムス)は野心を隠さず、ずる賢さと大胆な行動を武器に、国際的な広告会社の重役へと上り詰めた。アシスタントであるイザベル(ノオミ・ラパス)は、そんなクリスティーンに対して当初は憧れを抱いていたが、手柄を奪われ、同僚の前で恥辱を受け、彼氏には裏切られ…。それらすべてにおいてクリスティーンが裏で糸を引いていたと知ったとき、殺意が芽生え、ついにクリスティーンの殺害を決意する。しかし、その計画は自分自身が不利になるような証拠を構築した矛盾に満ちたものだった。実行の日、クリスティーンは誘惑を示唆するような招待状を受け取る。相手は不明だが、サプライズを好むクリスティーンは自宅の寝室で裸になり、この秘密の愛人との出会いを心待ちにするのだが…。

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湯を沸かすほどの熱い愛
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  • 『湯を沸かすほどの熱い愛』
  • ■発売日:発売中
  • ■発売元:クロックワークス
  • ■販売元:TCエンタテインメント
  • ■価格:¥3,800+税
  • 監督:中野量太
  • 出演:宮沢りえ
    杉咲 花 篠原ゆき子 駿河太郎 伊東 蒼
    松坂桃季/オダギリジョー 他

 

(C) 2016「湯を沸かすほどの熱い愛」製作委員会

昔ながらの銭湯が温めたものとは?

日本人になじみが深い銭湯。その歴史は古く、6世紀に渡来した仏教により施浴の習慣が広まったことまでさかのぼります。平安時代の末には京都に銭湯のはしりともいえる「湯屋」が登場。江戸時代になると庶民へと広まりました。以降、銭湯は日本人の日常のひとこまとなりましたが、近年は客の減少や施設の老朽化、後継者問題などで店舗数が激減しているといいます。とはいえ、ノスタルジックな“社交場”を愛するファンも多く、本作の中野量太監督もそんな銭湯文化に魅せられた一人です。

宮沢りえ演じる物語の主人公・双葉は銭湯「幸の湯」のおかみですが、あるじの一浩は1年前“湯のように蒸発”。双葉はパートに出て娘の安澄を育てていましたが、ある日、突然の余命宣告を受けてしまいます。ショックを受けながらも死ぬ前に絶対にやっておくべき4つのことを実行に移していく双葉。本作には、「難病」や「死」といった重い題材が登場しますが、悲しみをあおるのではなく、ユーモアも織り交ぜながら、“家族”の絆を爽やかに描いていきます。双葉を演じる宮沢は、きゃしゃな体とは裏腹に肝っ玉が据わった堂々たる“お母ちゃん”っぷりを見せ、その凛とした姿がとても印象的です。出会う人をそっと包み込む双葉の“熱い愛”―。それはラスト、見る者が思いも寄らない方法で実感させられますが、その衝撃のラストを語る上で欠かせないのが「幸の湯」の存在です。

時代を感じさせる昔ながらの銭湯「幸の湯」は、家族みんなで力を合わせる大切な場所として描かれています。外観の撮影は栃木県足利市にある「花の湯」にて、内観の撮影は東京都文京区にあった都内最古級の木造建築銭湯「月の湯」にて行われました。この「月の湯」は、残念ながら本作の撮影をもって取り壊されてしまいましたが、富士山が描かれたペンキ絵、鮮やかな赤いコイが印象的なタイル絵、歴史を刻んだ番台など、味わい深いたたずまいはまさに古きよき日本の姿そのもの。たおやかな母とその思いを受け止めて前へ進む家族の物語は、地域の人々をつなぐ銭湯と同じように、心をじんわりと温めてくれることでしょう。

最高の愛を込めて、葬(おく)ります。 ■Introduction

自主制作映画『チチを撮りに』で、ベルリン国際映画祭ほか、国内外10を超える映画祭で絶賛された中野量太監督が、自身のオリジナル脚本で商業デビューを飾った作品。脚本を読み、「心が沸かされた」と出演を決めたのは日本を代表する女優・宮沢りえ。優しさと強さをあわせ持ちながら、人間味溢れる普通の“お母ちゃん”という双葉役を演じる。気弱で引きこもり寸前の双葉の娘・安澄を演じるのは、杉咲花。オダギリジョーや松坂桃李など実力派俳優が脇を固めるほか、オーディションで選ばれた期待の新人子役・伊東蒼が新しい家族の物語を彩る。

■Story

銭湯「幸の湯」を営む幸野家。しかし、父(オダギリジョー)が1年前にふらっと出奔(しゅっぽん)し、銭湯は休業状態。母・双葉(宮沢りえ)は、持ち前の明るさと強さで、パートとして働きながら娘・安澄(杉咲花)を育てていた。そんなある日、双葉は突然「余命わずか」という宣告を受けてしまう。その日から「絶対にやっておくべきこと」を決め、実行していく双葉。<家出した夫を連れ帰り家業の銭湯を再開させる><気が優しすぎる娘を独り立ちさせる><娘をある人に会わせる>―。その母の行動は、家族からすべての秘密を取り払うことになり、彼らはぶつかり合いながらもより強い絆で結び付いていく。そして家族は、究極の愛を込めて“母を葬(おく)る”ことを決意する。

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