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アーキテクト・イン・シネマ 〜映画に観る建築・住まい・家族〜

博士と彼女のセオリー
  • 博士と彼女のセオリー
  • 『博士と彼女のセオリー』
  • ■発売日:発売中
  • ■発売・販売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント
  • ■価格:¥1,429+税
  • 監督:ジェームズ・マーシュ
  • 出演:エディ・レッドメイン フェリシティ・ジョーンズ
    チャーリー・コックス エミリー・ワトソン
    サイモン・マクバーニー 他
 

(C) 2014 Universal Studios. All Rights Reserved.

ハンプトン・コート宮殿(ロンドン〜イギリス)

ヘンリー8世が愛した名城


ハンプトン・コート宮殿(ロンドン〜イギリス)

(C)gnesher

類まれな政治手腕で絶対王政を敷き英国を繁栄に導く一方で、6人の女性と結婚、離婚を繰り返した英国王室史上、最もスキャンダラスな王ヘンリー8世。その愛憎劇の舞台となった彼の居城ハンプトン・コート宮殿では、ヘンリー8世やエリザベス女王が辣腕(らつわん)を振るったテューダー朝時代の王族の暮らしを体験することができます。

テューダー様式、バロック様式と異なる2つの建築様式が混在するハンプトン・コート宮殿は、時の権力者トマス・ウルジー枢機卿が1514年に建設した広大な荘園を、1526年にヘンリー8世へ献上したのがその起源。王はテューダー様式の立派な屋敷にグレート・ホールや礼拝堂を増築。その後、1960年代のウィリアム3世の時代になると、フランスのヴェルサイユ宮殿と張り合うため、建築家クリストファー・レンによりバロック様式へと大改修が行われました。宮殿内は、ヘンリー8世の時代を再現した「ヘンリー8世のアパートメント」や、約600人分の食事を作っていた巨大な「テューダー・キッチン」、ヘンリー8世の5番目の妻で、処刑されたキャサリン・ハワードの幽霊が出るとうわさされる「ホーンテッド・ギャラリー」など、15世紀から18世紀までの時代の変遷を見ることができます。当時の衣装をまとったスタッフたちによるガイドや演劇、実演は私たちを中世へといざなってくれることでしょう。

エディ・レッドメインがALS(筋萎縮性側索硬化症)に侵された天才物理学者スティーブン・ホーキングを演じアカデミー賞を獲得した『博士と彼女のセオリー』では、ホーキング博士が女王から大英帝国勲章を授かった場所として、バッキンガム宮殿の代わりにこのハンプトン・コート宮殿が使われました。夫妻が子供たちを眺めながら穏やかな時間を過ごした庭もまた、この宮殿のもうひとつの見どころ。60エーカー(東京ドーム約5個分)の広大な庭には、世界的にも難しい迷路として知られている「メイズ」や、世界で一番古いブドウの木といわれる「グレート・ヴァイン」などがあり、その美しさで訪れる人々を楽しませています。

生きる希望をつないだのは、無限の愛。

■Introduction

ジェーン・ホーキング著「Travelling to Infinity: My Life with Stephen」の映画化。“車椅子の天才物理学者”スティーヴン・ホーキング博士の半生と、彼を支え続けた妻との純愛を描く感動のヒューマン・ラブストーリー。ホーキング博士を演じるのは『レ・ミゼラブル』で青年マリウスを演じたエディ・レッドメイン。難病ALS(筋委縮性側索硬化症)に侵されていく難役を熱演し、新境地を開いた。また妻ジェーン役には、『アメイジング・スパイダーマン2』出演のフェリシティ・ジョーンズ。監督は、大道芸人にスポットを当てた『マン・オン・ワイヤー』でアカデミー賞の長編ドキュメンタリー賞を受賞したジェームズ・マーシュ。

■Story

天才物理学者として将来を嘱望されていたスティーヴン・ホーキング(エディ・レッドメイン)は、大学院に在籍しているとき、中世詩を学ぶジェーン(フェリシティ・ジョーンズ)と出会い、恋に落ちた。しかし、そんな幸せのさなかスティーヴンは難病ALS(筋委縮性側索硬化症)を発症し、余命2年の宣告を受けてしまう。それでも彼と共に生きると決めたジェーンは、力を合わせて病気と闘う道を選択する。妻となった彼女の支えで、スティーヴンは研究を進め“時の人”となるが、介護と育児に追われる彼女とはすれ違い、病状も悪化−。与えられた時間がどれほど貴重なものかを知る2人だが、立ちはだかる試練を前に限界を感じ、自身の無力さに打ちひしがれてしまう―。

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  • 永い言い訳
  • 『永い言い訳』
  • ■発売日:発売中
  • ■発売・販売元:バンダイビジュアル
  • ■価格:¥3,800+税
  • 監督:西川美和
  • 出演:本木雅弘 竹原ピストル 藤田健心
    白鳥玉季 堀内敬子 池松壮亮
    黒木 華 山田真歩 深津絵里 他

 

(C)2016「永い言い訳」製作委員会

“あたらしい家族”との日々で、男が見つけたもの

『ゆれる』『ディア・ドクター』など人間の心の奥底に潜む感情を鋭く、かつ優しく描き、見る者の心を揺さぶってきた西川美和監督。東日本大震災をきっかけに生み出されたという『永い言い訳』は、不慮の事故で妻を亡くした自己中心的な男が、同じく妻を失った遺族と過ごす中で、これまでの自分の生き方を見つめ直す過程が丹念に描かれています。

人気作家の衣笠幸夫と、トラック運転手の大宮洋一。自意識過剰で自己中心的な男と、武骨で感情を隠さない直情型の男という、性格も環境も面白いほどに正反対の2人が、”妻の死”という現実を前に生活を分かち合うことに。一口に「生活」と言っても片やデザイナーズ家具がセンスよく配置された幸夫の家、片や物が雑多に溢れた陽一の家。その部屋からも2人の世界が全く違うものであることが分かります。幸夫は妻の死の際、不倫相手と密会中で、本音では全く泣けないのに世間体を気にして悲劇の主人公を演じるなかなかの”ダメ男”。しかし、ふとした思いつきで大宮家の子守を買って出ます。自ら提案しておきながら、いざ子供たちを前にすると、おっかなびっくり。やがてぎこちなさを乗り越え、本当の家族のようになっていく姿は、なぜか憎めなくて応援したくなります。

これまで自分を中心に世界が回っていた男が、他者に必要とされる喜びを知ったとき―。過去の過ちは消せないけれど、身近な人の死を忘れず生きていく意味を考えたとき―。幸夫をはじめ、陽一や子供たちは時間と共にそれぞれのけじめのつけ方を見つけていきます。単純には割り切れないドロドロした心の暗部も映し出しながら、それでもよしとする監督の厳しくも温かな視線が、深い余韻をもたらす作品です。

妻が死んだ。これっぽっちも泣けなかった。そこから愛しはじめた。
■Introduction

原作・脚本・監督を手掛けたのは、『ゆれる』『ディア・ドクター』『夢売るふたり』に続くオリジナル脚本を書き下ろし、本作の原作で直木賞候補となった西川美和。自ら「集大成」と語る通り、卓抜したストーリーテリングと強烈な心理描写で、“人を愛することの素晴らしさと歯がゆさ”を描く。ゆがんだ自意識とコンプレックスに溺れるタレント小説家を、人間味たっぷりのチャーミングな人物に昇華させたのは、『おくりびと』以来、7年ぶりの主演となる本木雅弘。さらにミュージシャンの竹原ピストルを起用したほか、深津絵里や池松壮亮、黒木華など、実力派俳優陣が脇を固める。

■Story

人気作家の津村啓こと衣笠幸夫(本木雅弘)は、妻・夏子(深津絵里)が旅先で不慮の事故に遭い、親友と共に亡くなったと知らせを受ける。その時、不倫相手と密会していた幸夫は、世間に対して悲劇の主人公を装うことしかできなかった。そんなある日、妻の親友の遺族である夫・陽一(竹原ピストル)とその子供たちに出会った幸夫は、ふとした思い付きから幼い子供たちの世話を買って出る。保育園に通う灯(白鳥玉季)と、妹の世話のため中学受験を諦めようとしていた兄の真平(藤田健心)。子供を持たない幸夫は、誰かのために生きる幸せを初めて知り、むなしかった毎日が輝き出すのだが…。

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