ベナック城(ドルドーニュ〜フランス)
百年戦争の舞台となった中世の城塞(じょうさい)
(C)Salvator
実際に戦闘が開始された1340年から1453年まで、およそ1世紀にわたりフランスとイギリスの間で繰り広げられた「百年戦争」。戦況が不利だったフランスは、彗星(すいせい)のごとく現れた女性軍人、ジャンヌ・ダルクの活躍により国の危機を逃れましたが、ジャンヌはその功績とは裏腹に火刑(かけい)という悲劇的な死を遂げました。リュック・ベッソン監督の『ジャンヌ・ダルク』では、そんな彼女の波乱に満ちた生涯が、幻想的な映像を交えて描かれています。
劇中、神のお告げを聞いたジャンヌが訪れたシャルル7世の居城は、フランス南西部ドルドーニュ地方にあるベナック城で撮影されました。実際にシャルル7世が彼女と会見したのはロワール地方のシノン城ですが、ドルドーニュ地方にはロワール地方よりも多い1200城もの城が残されており、中でもこのベナック城は最も保存状態がよい城として知られています。
切り立った崖の上に建つベナック城は質実剛健で、いかにも難攻不落な雰囲気。実際の百年戦争ではフランス側の拠点として、ドルドーニュ川を挟んだイギリス側のカステルノー城と対峙(たいじ)していました。そんなべナック城は12世紀にアデマール・ド・ベナック男爵により築かれたもの。当初はロマネスク様式の主塔と2重の城壁を備えたものでしたが、その後13世紀、14世紀と戦乱の中、イギリスの“師子心王”リチャード1世やフランスの男爵らの城主により徐々に拡大されていきました。現在の城内は、天井からフックがつり下げられたキッチンや、大広間、寝室など14世紀の様子が再現されており、城壁や衛兵室には本作で使われた柵や、やりも展示されています。中でも圧巻なのは高さ150メートルのテラスから見るドルドーニュ川の風景。「フランスの最も美しい村」に選ばれた、石造りの家々が並ぶベナック・エ・カズナックや、ゆったりと流れるドルドーニュ川、対岸のカステルノー城が見える風景は、まるで中世に迷い込んだかのようです。
逃げない。
■Introduction
フランスの国民的英雄として知られる女性ジャンヌ・ダルクの生涯を映画化。主演を務めるのは、『バイオハザード』シリーズで6作連続主演を務めたミラ・ジョヴォヴィッチ。監督はSFアクション大作『フィフス・エレメント』でミラを見出したリュック・ベッソンが務める。
■Story
15世紀、イギリスとの戦争に明け暮れるフランスに突如、現れた17歳の少女ジャンヌ・ダルク(ミラ・ジョヴォヴィッチ)。「神の声を聞いた」というジャンヌは国王の元を訪れ、自らにフランス軍を指揮させてほしいと懇願する。果たして少女に国が救えるのか? 疑問視する周囲をよそ目に、烈火のごとく激したジャンヌは、劣勢のフランス軍を率いて奇跡的な勝利を収める。だが栄光もつかの間、彼女には過酷な運命が待ち受けていた…。

かわいくてちょっぴり怖い。ティム・バートン流おとぎ話
唯一の理解者だった祖父の死の謎を解くため、ある小さな島を訪れた孤独な少年ジェイクが、島で出会った奇妙な子供たちとの友情と冒険を通して成長していく姿を描いた『ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち』。原作者のランダム・リグスは、この物語をのみの市で売られていたたくさんの古い写真から思い付いたそう。ファンタジーとダークな雰囲気が混在する世界観は、“映像の魔術師”ティム・バートンの手によって、よりイマジネーション豊かな世界へと生まれ変わりました。
空気よりも軽い女の子、透明人間の男の子、恐ろしく力持ちの女の子、体の中に無数の蜂を飼う男の子などなど、ジェイクが出会ったのは不思議な能力を持った子供たち。彼らは愛情深くも厳格なミス・ペレグリンの擁護のもとで暮らしていました。そんな彼らが暮らす屋敷は映画の世界観をつくる上で大きな役割を果たしています。重厚で美しく、どこか不気味さも感じるれんが造りの屋敷は、実際にベルギー北部のアントワープにあるお城で撮影されたもの。ロケハンの際、このお城を一目で気に入ったというティム・バートンは、映画の大半をこの屋敷で撮影したそう。まるでおとぎ話から抜け出してきたようなこの空間もまた、“キミョかわいい”子供たちに負けない魅力を放っています。
自分たちの敵、バロンから逃れるために、第二次世界大戦の真っただ中である1943年の「ある1日」を繰り返し生きている子供たち。屋敷で人目を避けるように過ごす彼らと、周囲に溶け込めないジェイクが、自分たちの真の力を発揮しピンチに立ち向かう姿はこの映画一番の見どころ。特殊な能力を持つ子供たちならではの戦い方に心が躍ります。これまで『シザーハンズ』『ビッグ・フィッシュ』『チャーリーとチョコレート工場』など、マイノリティーたちをチャーミングに描いてきたティム・バートン。「自分も子供のころは変わり者といわれた」という監督だからこそ描けたこの作品には、彼の魔法がたくさん詰まっています。
ティム・バートン史上、最も奇妙。
■Introduction
ランサム・リグズによる全米ベストセラー小説「ハヤブサが守る家」を、『チャーリーとチョコレート工場』『アリス・イン・ワンダーランド』のティム・バートン監督が映画化。普通の人とは異なる、奇妙な能力を持った子供たちが織りなす物語を描く。主人公のジェイクを演じるのは『ヒューゴの不思議な発明』で知られるエイサ・バターフィールド。ミス・ペレグリン役は『007 カジノ・ロワイヤル』『ダーク・シャドウ』のエヴァ・グリーンが務める。
■Story
フロリダで生まれ育ったジェイク(エイサ・バターフィールド)は、周囲になじめない孤独な少年。そんな彼の唯一の理解者である祖父が謎めいた死を遂げた。祖父の遺言に従って小さな島を訪れたジェイクは、森の奥で古めかしい屋敷を発見。そこには美しくも厳格なミス・ペレグリン(エヴァ・グリーン)と奇妙な子供たちが住んでいた。やがて彼らと心を通わせ、夢のような時間を過ごしたジェイクは、自らに宿った“ある力”に気付き、屋敷に迫る恐るべき脅威に立ち向かっていくのだった…。
