令和6年度 2級建築士学科試験 試験分析
試験分析
全体総評
令和6年度の試験は、正答肢が初出題の問題が100問中22問となり、令和5年度と同程度でした。
科目別では、学科Ⅰ(建築計画)、学科Ⅲ(建築構造)、学科Ⅳ(建築施工)は、例年並みの難度でしたが、学科Ⅱ(建築法規)は初出題数が少なく、例年に比べ、難度は低かったと考えられます。
全体的には、各科目で、新しい用語や事項も出題されており、そういった問題に冷静に対応することと、過去問とその周辺知識を正しく理解、習得し、答え以外の新規の選択肢などに惑わされず、問題に対して正しく判断し、正確に計算することで、十分に合格圏内へと入ることができる出題内容だったと考えられます。
正しい学習を積み重ねられたかが問われた試験でした。

学科Ⅰ(建築計画)
各分野の出題数は、令和5年度と同様、建築史の問題が2問、計画原論が8問、計画各論が8問、建築設備が7問の出題となりました。
全体的に正答肢は過去問の知識で対応できる問題が多く、その他の選択肢に初出題の用語や言い回しを変えた内容が出題されており、戸惑った方もいたと考えられます。
建築史(No.1~2)
「日本の歴史的な建築物」と「住宅作品(建設地)とその設計者との組合せ」の問題が1問ずつ出題されました。
No2の「ヒラルディ邸(メキシコ)」と「シルバーハット(東京都)」は過去の1級建築士試験からの出題でした。
計画原論(No.3~10)
No5「材料・物質の熱伝導率の大小関係」は新傾向の出題でした。
他にもNo3-5「ET*」などの初出題用語はありましたが、正答肢は過去問から多く出題されました。
また、令和5年度に引き続き計算問題は出題されませんでした。
計画各論(No.11~18)
計画各論も正答肢は過去問から多く出題されましたが、No16-5「乳幼児連れの親子が利用する便所のブースの広さ」やNo17-4「高齢者の転倒防止と玄関の床面と上がり框の色差」など、過去問とは異なる言い回しの正答肢もみられました。
また、まちづくりに関してはNo18-3「ポケットパーク」が初出題用語でした。
建築設備(No.19~25)
No19-4「VP管」、No21-5「排水管の掃除口」、No22-2「自然冷媒ヒートポンプ給湯機」、No22-3「ハイブリッド給湯システム」、No22-4「電気温水器」、No22-5「平板型の太陽熱集熱器」、No23-1「高調波電流」、No24-2「アトリウム空間に用いる感知器」、No 25-2「機器・建材トップランナー制度」など初出題の用語が多くみられ、No24-1「非常用の照明設備の予備電源」は告示に規定されている詳細な内容からの出題でした。
学科Ⅱ(建築法規)
昨年同様、建築基準法が20問、関係法令が5問出題されました。
建築基準法の計算問題としては、「No5(採光に有効な部分の面積の算定)」「No15(建蔽率)」「No16(容積率(特定道路))」「No17(高さ制限)」が出題され、問題数としては昨年から1問減り、4問の出題でした。
「No5(採光に有効な部分の面積の算定)」は、平成23年度以来出題されていなかった川の緩和を考慮する問題でした。
建築基準法
建築基準法の文章問題は16問出題されており、正しいものを選ぶ問題は出題がありませんでした。
「No3(確認申請)」では、全国どの場所においても確認済証の交付を受ける必要のある行為ではなく、準防火地域における出題内容でした。
「No8(構造強度)」の正答肢5は基本的な問題でしたが、選択肢1、3は初出題の選択肢で、解答の判断がしにくかったと考えられます。
その他の建築基準法の文章問題は、過去問学習で概ね対応できる出題が多くみられました。
関係法令
関係法令については、「建築士法」が例年通り2問出題され、関係法令の融合問題が3問出題されました。
また、融合問題については初出題(改正新規)の選択肢として、「宅地造成及び特定盛土等規制法」が3選択肢出題されました。
学科Ⅲ(建築構造)
出題構成は、例年通り構造力学6問、一般構造13問、建築材料6問が出題されました。
全体として、過去問の出題内容をしっかりと理解して、それを正解できることはもちろん、言い回しが替えられた発展的内容に対応できる学力が求められている試験内容であったといえます。
構造力学(No.1~6)
No1(断面の性質)は、4種類の断面について、X軸及びY軸まわりの断面二次モーメントを比較する問題で、一見計算に手間がかかりそうですが、正答肢5は、断面二次モーメントが寸法の4乗に比例することから判断できる問題でした。
また、No2(応力度)は、最大曲げ応力度に関する問題でしたが、「最大曲げ応力度」が所定の値となるときの梁せいを求める問題で、このような出題は初めてでした。
その他No3~6は、過去問からのアレンジ問題でした。
構造力学は、No1、2も含め、いずれも過去問の延長線上といえる問題でした。
一般構造(No.7~19)
一般構造の正答肢は、No18(構造計画)の正答肢3のねじれ振動以外は、過去問からの出題で、比較的得点しやすい構成だったと考えられます。
No12(木造(枠組壁工法))については、正答肢4が耐力壁の壁材としてせっこうボードを貼り付けるための釘の種類を問う問題で平成20年度以来の出題でした。
また、No16(鉄骨造)の正答肢3の埋込柱脚、No17(鉄骨造)の正答肢1の隅肉溶接は、これまで正しい選択肢として出題されていたものが、今回は誤った正答肢として出題されており、曖昧な知識ではこれらを正解することは難しかったと考えられます。
No19(耐震診断・耐震補強等)については、正答肢1は過去問であるものの、選択肢2~4は、新規の出題で構成されていました。
建築材料(No.20~25)
No20(木材)に関しては、耐腐朽性及び耐蟻性が高い木材に関する問題で平成21年出題の過去問の発展問題でした。
その他の問題については比較的解きやすい過去問で構成されていました。
学科Ⅳ(建築施工)
出題構成は例年同様、契約・計画・管理が5問、各部工事が 18 問、その他が2問出題されました。
過去に出題されている選択肢の他、実務的で詳細な知識を要する出題もありました。
高得点を取るためには、過去問の内容については、正誤が変えられても判断ができることは必須であり、その上で、実務の知識や細かい施工上の数値を理解していることが必要であったと考えられます。
契約・計画・管理(No.1~4、25)
№2(申請・届出)は、「申請・届出・報告」とその「提出先」の組合せが出題され、今年度は「申請者・届出者」も問われました。
また、№25(請負契約)は、令和元年以降「民間建設工事標準請負契約約款(甲)」に関して出題されていますが、正答肢は新規の内容であり、過去問+αの知識が要求されました。
各部工事(No.5~22)
木造に関しては、№6(木造住宅の基礎工事)の他に、№15・16(木工事)の例年通り3問が出題されました。
また、平成 28 年以降、例年2問出題されていたコンクリート工事が1問、例年1問出題されていた鉄筋工事が2問出題されました。
その他(No.23、24)
№23(施工機械・器具)は、各種工事において、「作業内容」と「器具・機械」の組合せや「工法」の特徴が問われました。