『雪と建築』
ほぼ全国で雪が降る日本では、例え豪雪地帯でなくても雪に配慮した建築物を検討する必要があるのかもしれません。しかし、各地で降る雪の性質や量は気温や地理的要因により異なるため、居住する地域によって建築物を企画、設計する必要があります。例えば、東京都のような都市部で起こりやすい雪問題として挙げられるのが落雪事故。この問題は建築物が集中し、人通りの多い場所において起こりやすく、特に高層建築物への着雪が原因で起こる落雪事故は人に当たれば大事故に繋がる恐れがあります。このため、高層建築物では「落雪スペース」を設けて対応する事が基本とされています。また、高層建築物の周りで起こりやすいのが、周囲に建つ低層建築物への吹き溜まりの問題です。この吹き溜まりにより、屋根の雪荷重に影響を及ぼす可能性があります。その他にも、各地域に生じる問題やそれに対応するための手段が書かれた本書は技術者の助けとなる一冊です。
『Ahaus NO.8』
県全体が豪雪地帯に指定されている青森に拠点をおく雑誌です。それだけに、雪国ならではの実例を見ながら雪問題を考察する事ができます。この号では雪国の集合住宅に焦点をおき、問題を取り上げています。起こりがちなのが集合住宅としての基本デザインを重視してしまうことにより、雪対策の基本を忘れてしまっているという問題。例えば、1階に高齢者や身障者用の住戸を設けている集合住宅が多いですが、豪雪地帯ではそれらが雪に埋もれて使用できないケースが発生しています。さらに、防寒具・暖房設備・燃料・雪かき道具・冬用タイヤなどの生活必需品を置くスペースが玄関周りに無いために住人が苦労しているケースもあり、地域ごとでの気候風土や地域文化に根差した住居が求められています。一戸建住宅の割合が全国平均よりも多い青森県ですが、集まって住むことは大きな可能性を秘めており、今後の雪国における暮らし方について考えさせられます。