『有機的建築 オーガニックアーキテクチャー』
近代建築の三大巨匠に数えられる著名な建築家、フランク・ロイド・ライト。アメリカのグッゲンハイム美術館や、日本の旧帝国ホテルなどが代表的な建築物として知られています。そんな彼が提唱したのが、本書のタイトルにもなっている「有機的建築(オーガニックアーキテクチャー)」です。「有機的建築とは、外からあてがわれた形態に併せて作られるようなものではなく、その建築が必要とするすべての要素が調和し、内から外へと発展していく建築である。」と本人の言葉通り、彼の建築物は周囲の自然と調和したものでした。本書では1935年に出版された「The Future of Architecture」のために書きおろされた「有機的建築のキーワード」、タリアセンの実習生に語られた講義録など、その概念が詳述されているテキストをまとめたものです。誰もが快適にすごせるような統一されたフォルムをもち、自然に根ざした建築を、フランク・ロイド・ライト自身の言葉で学ぶことができます。
『フランク・ロイド・ライトの現代建築講義』
1947年プリンストン大学の名誉芸術博士となったフランク・ロイド・ライトが同大学で行なった講演を全6章にまとめた一冊です。先にご紹介した本の通り、「有機的建築(オーガニックアーキテクチャー)」を提唱、実施してきたライトは、アメリカ中西部の草原地帯に根ざした住宅として「プレーリー・ハウス」や「ユーソニアン・ハウス」という住宅建築群のほか、落水荘をはじめとする名建築を残してきました。この講演ではそんなライトの建築観、設計観が余すことなく語られています。本書の中では、ル・コルビュジエが提唱した、伝統から切り離された合理性を信条としたモダニズム建築との対決を記した内容もあり、同じ近代建築の三大巨匠に数えられながら異なる建築論をもつ2人の対比も興味深いものです。当時の工業化が進む社会情勢をふまえて、建築家を目指す若者たちのために発表された“現代建築論”ですが、現在においても、いまなお示唆に富んでいる充実の一冊です。