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今月のオススメの一冊

建物の保存

『保存原論 日本の伝統建築を守る』

保存原論 日本の伝統建築を守る 東京駅丸の内駅舎の保存・復原工事は大きな注目を集めていました。近年、歴史ある建物や街並みを保存することへの関心が多くの人々の間で高まっていますが、実際に保存・復原を行う際には「何を保存し、どのような形で復原するのか」という問題に直面します。例えば、帝国ホテルの旧本館の例では、ロビーを明治村博物館に移築しましたが、もし元の場所に残すことができたなら、どうなっていたでしょうか。ロビーのみならず、孔雀の間を残せたかもしれないのです。また、この建物に使われている弱い凝灰岩・大谷石の劣化をどうするかという問題は今も残されています。このように、「何を保存し、何を作り変えるのか」という問題に正解はなく、建物が持つ性格、状況や条件にあわせて個別に答えを出していくほかないのです。本書で紹介されている14の事例には、“歴史性の尊重”という一貫した道筋があります。そのさまざまなプロセスを学び、それを理解する事は、日本の文化の保存・復原における問題解決の手がかりとなるのではないでしょうか。

『保存原論 日本の伝統建築を守る』 保存原論 日本の伝統建築を守る

『おもしろサイエンス 木造建築の科学』

おもしろサイエンス 木造建築の科学2000年の建築基準法改正によってさまざまな木造建築物が建てられるようになり、近年、木の住宅の良さが改めて見直されています。「木と紙の住宅」と言われる日本の住宅は、実に1500年にもおよぶ歴史があります。ですから、日本の建築物を保存する際には、伝統的な木造建築を知ることが避けて通れないものとなるでしょう。例えば、木造建築を保存する際に考えなくてはならないのが腐敗です。日本のように湿度の高い国では、その対策は必要不可欠。昔の民家や、今でも残っている古い神社や寺院の床下を見ると、人がしゃがんで入れる程の空間がありますが、これは床下に空気を流すことで湿気をためないようにしています。また、屋内については、乾燥した木材を使用し、動く空気が当たるような構造にすることも防湿対策として挙げられています。伝統工法や木が持つ素晴らしさを、科学的な視点を加えて解説している本書。保管という点だけではなく、長く住むことができる良い家を造るためのヒントにもなるでしょう。

『おもしろサイエンス 木造建築の科学』おもしろサイエンス 木造建築の科学

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