『アルヴァ・アアルト アアルト邸とアトリエ―ヘルシンキ 1936,1955』
20世紀を代表する近代建築の世界的な建築家として有名なアルヴァ・アールト。その手腕は建築だけでなく、都市計画から家具、テーブルウェアなどの生活用具まで多岐にわたって振るわれました。フィンランド建築の発展に寄与したアールトは北欧のモダニズムの旗手として登場し、マイレア邸、セイナッツァロ役場、ヘルシンキ工科大学、フィンランディアホールなどを手がけましたが、本書ではその中でも原点といえる自宅をピックアップ。1936年に設計し、以後40年間暮らしたという自宅兼スタジオとアトリエを豊富なカラー写真とともに紹介しています。白く塗られたレンガとダークブラウンの木板で構成された抑制のきいた外壁、吹き抜けで大きな窓から自然光が入る1階のアトリエ、アトリエと引き戸一枚で隔てられている住居部分には温かな印象を与える木製の壁やインテリアが多数散りばめられています。アールトの根源的な思索である「住まいとはどうあるべきか」をうかがわせる一冊です。
『北欧の巨匠に学ぶデザイン』
『北欧の巨匠に学ぶ図法 家具・インテリア・建築のデザイン基礎』の続編である本書は、北欧のモダニズム建築の基礎をつくった3人の巨匠、グンナール・アスプルンド、アルヴァ・アールト、アルネ・ヤコブセンの魅力あふれる作品を取り上げながら、“自然”をキーワードにして北欧のトータルデザインの展開を読み解いています。なかでも今回のテーマで取り上げたアールトは、「自然と向き合う建築」を実践しています。野生の自然をそのまま受け入れるのではなく、きっちりと壁を建て、その内部に理想の自然を再構築しようしたアールトの試みは、戦後の第一作にして生涯の傑作とも言われる公共施設「セイナッツァロの役場」にも表れており、中庭などは本来の地面より4メートルも高い位置に土を盛って設けられています。同じ北欧にあっても、それぞれ違う自然観を持つ3人の巨匠。そんな彼らが相互に影響をし合いながら作り上げた北欧のモダンスタイルデザインの神髄が詰まっています。