『仕事をつくる―私の履歴書』
本書は建築家・安藤忠雄による自身の半生記です。子供の頃、自宅の長屋を増築した際に、若い大工が一心不乱に働く姿を見て、建築という仕事に興味を持ったという安藤さんが、いかにして世界的な建築家まで上りつめたのかがつづられています。家庭の経済的理由と学力の問題から大学進学を諦めた安藤さんは、京都大学や大阪大学の建築科に進んだ友人に教科書を買ってもらい、それをひたすら読み続け、彼らが4年間かけて学ぶ量を1年で習得したといいます。その後、1969年に事務所を開きますが、「学歴も、社会的基盤もないとは、こういうことか」と痛感させられたといいます。「仕事は自分でつくらなければならない」と考え、無謀な国際コンペに応募したり、空き地を見つけたら勝手に空想の建築をデザインし、所有者へ提案に行ったのだとか。この本には“やればできる”ことを体現した安藤さんの生き様と、トップに君臨する者の“仕事に対する姿勢”が描かれています。また、U2のボノや、サントリーの佐治敬三氏など、安藤さんと交流の深い人たちとのエピソードも明かされています。
『安藤忠雄の建築 4』
建築家・安藤忠雄の作品を紹介する作品集の第4弾。第1弾では住宅作品、第2弾では海外作品、第3弾では国内プロジェクトを紹介してきた本シリーズは、当初、第3弾完結で企画されたものでした。第4弾となった本書では、2008年以降に国内外で竣工した選りすぐりの最新作19点を紹介。安藤建築の原点たる光と幾何学を主題とした小作品や、国内外の住宅、中国での野心作・上海保利大劇場など海外の大規模プロジェクトが、美しい写真と図面、安藤さんのスケッチを用いて解説されています。もちろん、それらも必見ですが、注目したいのは「終わらない建築への挑戦」と題して執筆された安藤さんのエッセイ。建築活動をスタートしてから46年が経ち、さまざまな経験を積んできた今も続いているという、安藤さんの“悪戦苦闘”ぶりが書かれており、海外で仕事をすることの大変さと、これからも“悪戦苦闘”するであろう建築への期待が込められています。今や建築家の枠を越え活躍の場を広げる安藤さん。彼の思考力、実行力など多くを学ぶことができる一冊です。