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今月のオススメの一冊

古民家

『古民家解體新書U〜古民家を未来に残すための124の知識〜』

古民家解體新書U〜古民家を未来に残すための124の知識〜 著者は、“コミンカニスト”を名乗る川上幸生さん。阪神淡路大震災を経験後、愛媛県松山市に移住し、残せる“古民家”と、残せない“古屋(ふるや)”を判別する「古民家鑑定士」という資格を創設しました。そんな著者が、「古民家」とはどういう考えに基づいて作られたものなのかを、先人の残した言葉から推察。オランダ語の医学書を杉田玄白らが訳した「解體新書(かいたいしんしょ)」から名前を取り、古民家を日本の住文化ととらえ、先人への畏敬の念と共に未来の子供たちへ残していきたいという思いで執筆しました。そんな川上さんが「資格取得に役立ててほしい」と記す通り、本書はまるで“古民家の教科書”のよう。全8項目にまとめられた本書のなかには、古民家の定義から歴史、建築法などに加え、全国の古民家が写真と共に紹介されています。また、住宅を長持ちさせるためのメンテナンス方法などにも触れ、詳細な解説がなされています。巻末には、50音順に建築用語や重要語句がまとめられており、辞書のように使うことも。古民家のみならず、建築を学ぶ人すべての人にオススメしたい一冊です。

『古民家解體新書U〜古民家を未来に残すための124の知識〜』 古民家解體新書U〜古民家を未来に残すための124の知識〜

『古民家遊々』

古民家遊々現代の環境にあわせて、暮らしやすい住宅へと見事再生を果たした日本各地の古民家を紹介した事例集である本書には、建築家のアイデア、職人のワザと知恵がたくさん詰まっています。事例には、長野県安曇野にある古民家「矢野口邸」や、築140年の古民家を加賀より移築し、食事処・宿泊施設として再生した「料理宿やまざき」などを掲載しており、地域性の違いがそれぞれの古民家の形や造りなどの特徴に影響をもたらしていることがよく分かります。再生前、再生後の古民家を、写真とともに順を追って解説しているため、解体や運搬の様子などが見た目にも分かりやすい構成になっています。また、「料理宿やまざき」を設計した“古民家再生の父”と呼ばれる降幡廣信さんが、伝統の継承をテーマに語ったインタビュー記事も掲載しており、盛りだくさんな内容になっています。古民家再生の目録のようでもあり、施工の様子などを見せてくれる教科書のようでもあり、また、設計事務所や工務店の連絡先が記載されているカタログのような役割をしてくれる一冊です。

『古民家遊々』古民家遊々

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