第25回 JIA神奈川建築WEEK 横濱建築祭 〜CROSS×CROSS〜 学生卒業設計コンクール

第25回 JIA神奈川建築WEEK 横濱建築祭 〜CROSS×CROSS〜 学生卒業設計コンクール

名称

第25回 JIA神奈川建築WEEK 横濱建築祭 〜CROSS×CROSS〜 学生卒業設計コンクール

開催日

2014年2月28日〜3月3日

会場

みなとみらい線馬車道駅コンコース

主催

公益社団法人 日本建築家協会・JIA神奈川

特別協賛

株式会社総合資格

公益社団法人 日本建築家協会・JIA 神奈川が主催する「学生卒業設計コンクール」が2月28日(金)〜3月3日(月)、みなとみらい線馬車道駅構内のコンコース会場にて開催された。 今年で25回目を迎えるこの設計コンクールは、市民が建築文化を楽しみつつ建築家と交流するイベント「横濱建築祭〜CROSS×CROSS〜」の一環のコンテンツである。今年も、去年と同様に県下の「神奈川大学」、「関東学院大学」、「横浜国立大学」、「東海大学」、「東京工芸大学」、「明治大学」、「慶応義塾大学」の7校(合計34作品)の卒業設計を展示、公開審査が行われた。
3月2日(日)の公開審査会は、審査委員に宮 晶子氏(JIA神奈川 STUDIO 2A)、島田 陽氏(タトアーキテクツ/島田陽建築設計事務所)、納谷 学氏(JIA神奈川 納谷建築設計事務所)、前田 圭介氏(UDI一級建築士事務所)を迎えて開催された。審査委員が印象深い学生の作品に票を投じ、優秀作品を選んでいく。

公開審査会当日の午前中は、審査委員が学生一人ひとりの話を聞きながら展示作品を見て回り、非公開審査を行っていた。学生たちはテーマや作品コンセプトを制作した模型・パネルを使い、審査委員にプレゼンテーションする。中にはノートPCやタブレットPCを使い、作品をアピールしている学生もおり、プレゼンの仕方にも個性があり興味深い。
また、駅構内の一般の通行人の方々が目に留まる作品を鑑賞したり、学生に質問していた姿も見受けられた。そんなシーンも、このように拓けた会場ならではの光景であり、「市民が建築文化を楽しみつつ建築家と交流する」というイベント趣旨の実現を感じることができた。

午後からは、審査委員・学生がコンコース内に設営された公開審査会場に集まり、一次審査から最終審査までがとり行なわれた。
一次審査は、各審査委員が5票を投票し作品を選んでいく。また選出した作品に対して簡潔なコメントを加え、その根拠を分かりやすく学生に説明する。
リアリティのある・生活が想像できる・時間軸や人間の知覚に焦点をあてる等、「実務視点」から評価された作品が選出される一方、完成度より今までにない提案や設定に重点をおく・現実として実現が難しそうだがシステムとして面白いといった計画も賞賛されていた。
一次審査で選出された学生は作品をプレゼンテーションし、審査委員との質疑応答を行う。
最終選考では、審査委員が各々3票を投じ優秀作品を選んでいく。また投票だけではなく、審査委員でのディスカッションも行い、慎重に選んでいく方式であった。

今回、最終審査で選出される賞は「金賞(1名)」「銀賞(1名)」「審査委員賞(4名)」。
また展示期間中、一般の方や学生による投票の結果で選ばれる「総合資格学院賞(1名)」も発表された。
以下、選出された作品をご紹介する。

●審査委員

宮 晶子氏(JIA神奈川 STUDIO 2A)

島田 陽氏(タトアーキテクツ/島田陽建築設計事務所)

納谷 学氏(JIA神奈川 納谷建築設計事務所)

前田 圭介氏(UDI一級建築士事務所)

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■金賞

「パブリックモール -公共建築の解体再構築による、デザインの民主化システム- 」

【慶応義塾大学】佐々木 雅宏さん

佐々木 雅宏さん

【このテーマに決めた理由】

形状の解釈は人それぞれであるが、こと公共施設に関しては、人々にとって共感できる建築物にしたいという思いから「多くの人の意見を集約して、みんなで作り上げる設計」という仕組みの提案がしたかった。

【卒業設計制作時のエピソード】

システムの提案だったので、まず調査の量が膨大で大変でした。 企業や業者など、とにかく色々な場所を取材し情報を手に入れました。 コンセプトを作り上げるのに4〜5ヵ月、制作全体で9ヶ月で完成させました。

【建築家としての将来の夢】

今回の作品にこめた「設計を設計する」というテーマのとおり、 今までの概念や成功にとらわれず、バックグラウンドから見直して新しい設計を創っていきたい。

■銀賞

「都市の中の村 -ハノイの市場- 」

【横浜国立大学】 PHAM NGUYET ANHさん(ファムグエットアンさん)

PHAM NGUYET ANHさん(ファムグエットアンさん)

【このテーマに決めた理由】

卒業設計をするにあたって、母国ベトナムの問題を解決したい、失われかけている独自の地域性を大事にしたい、という思いからテーマをスタートさせました。

【卒業設計制作時のエピソード】

模型制作を通して、色々な人との関わりが大事だと感じましたね。 特にベトナムの仲間6〜7人に手伝ってもらった際、彼らからも問題定義があり、それを作りながら反映させていったので、出来上がったときの喜びもひとしおでした。

【建築家としての将来の夢】

ベトナムで建築家になることが夢です。 今は特に建物のスケールにこだわりはないが、ベトナム独自の歴史や技術などを統合したオリジナルの建物をつくれるようになりたい。

■総合資格学院賞

「共に生き繋がる -丘にある高齢者集合住宅- 」

【神奈川大学】 佐藤 亮さん  

佐藤 亮さん

【このテーマに決めた理由】

高齢者のためになることがしたい、という気持ちが出発点です。 人々との繋がりが希薄になりがちな高齢者ですが、そういった現状を踏まえ、地域と交流が自然に生まれるような空間を創りだしたいという想いで制作しました。

【卒業設計制作時のエピソード】

計画するにあたり、「自分の手で書いた、温かみのある生きた線」で高齢者に対する思いを表現したかったので、図面などすべて手書きで制作しました。模型に関しては後輩に手伝ってもらったが、すごくいいものに仕上がっているので感謝しています。

【建築家としての将来の夢】

絵を描くが好きで、それを活しながら設計で将来を目指しています。 身近に感じられる住宅の設計に将来携われたらと思っています。

■審査員賞/宮賞

「分裂する建築と公共性」

【明治大学】 川又 修平さん

川又 修平さん

■審査員賞/島田賞

「The hub -松山市における都市拠点の提案- 」

【明治大学】 松尾 悠昂さん

松尾 悠昂さん

■審査員賞/納谷賞

「現代的都市型漁村集落」

【明治大学】 吉永 ほのみさん

吉永 ほのみさん

■審査員特別賞/前田賞

「ぼくと祖母の家の開き方」

【横浜国立大学】 成願 大志さん

成願 大志さん

最終審査では、金賞と銀賞とが異なった次元での提案をしており、審査委員も甲乙つけがたい状態であった。それぐらい評価としては拮抗しており、熱い戦いが繰り広げられた。
また、この2作品はJIA全国学生卒業設計コンクールへ出場する。
総合資格学院賞に関しては、今後もわが国の課題である高齢化社会問題へのアプローチといった点で、一般の方々の評価を得たのではないかと思う。

問題を提案し解決を目指した作品や、学生ならではのユニークな視点から計画など、見所のある数々の作品が目を引いた今回の卒業設計コンクール。学生にとっても、審査委員である建築家や一般の方々との重要な意見交換の場になったのではないだろうか。今後、この貴重な体験を糧に成長していくであろう学生諸氏の活躍に期待したい。

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