クラブ・エス ウェブマガジン

今月のオススメの一冊

お墓の建築

『世界のお墓文化紀行』

世界のお墓文化紀行 古来より人類は「お墓」を作り続け、その葬法などには、時代や風土、民族に応じてさまざまなスタイルが生まれています。本書は、そんな「お墓」をテーマにユニークな葬法や各国の“墓事情”を紹介しながら、民族や国によって異なる多様な死生観に光を当てる一冊です。全ページオールカラーかつ、写真が満載の本書は、さしずめお墓の写真集といったところ。現代の大都市にあるテーマパークのような霊園から、アフリカやアジアの辺境のお墓まで、古今東西バラエティーに富んだお墓を見ることができます。エジプトのピラミッドやカンボジアのアンコール・ワット、イースター島のモアイなどは、「聖地・遺跡となった墓地・葬地」の章に収載されており、一般的な観光ガイドブックとは少し異なる“墓視点”の紹介文は、読み応えが抜群で興味深いものがあります。またお墓というテーマにふさわしく、少々、不気味なお墓も紹介されていて、こちらはさらに興味津々。特に、故人を模した人形が飾られているインドネシア・スラウェシ島の「トラジャ族の岩窟墓」には、恐ろしいのになぜかじっと眺めてしまう奇妙な魅力があります。「お墓は単なる死後の住居ではない。その土地の人々の精神性やお国柄、気候などの事情が色濃く反映された、文化のひとつである」とあとがきにあるように、読み終わった後には、お墓の見方がちょっと変わっていることでしょう。

『世界のお墓文化紀行』 世界のお墓文化紀行

『世界のお墓』

世界のお墓お墓といえば死者が眠る場所。そのため日本では「陰気くさい」や「ちょっと怖い」などのイメージが付きまといますが、世界に目を向けてみると、どうやらお墓の風景は驚くほどさまざまなようです。そんな世界各地のお墓から、美しいもの、珍しいもの、歴史あるものなど、えりすぐりの52カ所を美麗な写真と共に紹介するのが本書、「世界のお墓」です。ページをめくるや否や、抱いていたお墓のイメージは一変。例えばルーマニアのサプンツァ村にあるお墓の墓標には、楽しい絵と詩で死因が刻まれています。「好きな物はトラクターと心を慰めてくれるお酒で、僕は33歳という若さで死んだ」なんて刻まれているのだから驚きです。またイラン・イスラム共和国には鏡のモザイクが張られた、まばゆいほどに豪華絢爛(けんらん)な墓所も。さらにロマンチックなものでは、死後に宇宙旅行の夢がかなう、アメリカの「宇宙葬」なる壮大な弔い方も紹介されています。息をのむほど美しかったり、目を疑うほど奇妙だったり、お墓ひとつとっても世界は広いのだなと思い知らされます。しかし写真と共に記された文化的・宗教的背景の解説を読むと、墓の形はさまざまでも、故人を思う気持ちは、いずこでも変わらないことが分かります。「どうせ永眠するならこんなお墓がいいな」とつい考えてしまう、奇抜で楽しいお墓ガイドです。

『世界のお墓』世界のお墓

ページトップ