『11の子どもの家』
編者である象設計集団は、保育園や幼稚園、こども園など、就学前の子供たちの居場所を、日本各地で数多く手掛けている建築設計事務所です。本書はそんな象設計事務所の実績から「子どもの家」を11軒取り上げて、一冊にまとめたもの。象設計事務所が保育者と共にどんな思いで設計に取り組んでいるのか、そして出来上がった「家」の中で、子供たちはどういう暮らしをしているのかを紹介する内容となっています。第1章では象設計集団の「子どもの家」についての考え方をかわいいイラストを交えて解説。続く第2章では11の「子どもの家」の具体例が子供たちの笑顔の写真と共に紹介されています。例えば東京都葛飾区の「うらら保育園」は、老人ホームの一角に設けられた珍しい保育園。構造壁を無くし、広くて天井の高い空間をつくるなど、大家族のように暮らすための工夫が一つ一つ丁寧に記されています。同じ章に収められている北海道札幌市の「宮ノ丘幼稚園」もまた、目を引く事例。ここは子供たちが多様な自然に出会えるようにと、ランドスケープ・デザインと建物を一体で計画した幼稚園で、景観に溶け込む園舎が見事です。最後の3章には、保育者と教育研究者(和光保育園・磯部裕子氏、川和保育園・鈴木まひろ氏、寺田信太朗氏、久保健太氏)による、「保育と空間」をめぐる座談会を記録。保育に対して空間が果たす役割の大切さを知る、読み応えのある一冊です。
『保育園・幼稚園・こども園の設計手法』
働き方が多様化する昨今、保育園、幼稚園、こども園を取り巻く制度や状況も変化し続け、それに伴い、施設の新築・増改築例も増えています。そんな社会を背景に、保育施設建築の入門書として刊行されたのが本書。設計に関わる基本事項をまとめつつ、郊外住宅地・都心部、新築・リノベーション・コンバージョンといった立地、条件別の課題に応えた12の事例を紹介しています。1章は「設計に関わる保育の基本」と題して、保育施設をめぐる社会背景や各種基準、子供たちの1日の過ごし方などについて収載。2章の「建築計画の基本」では、設計業務の流れから、配置計画、各室空間計画、遊具の計画などを具体的な数値やパターン例を交えて解説しています。3章の「設計事例―立地・条件別」では、郊外、改修・増築、増設といった条件別に事例を紹介。たくさんのカラー写真や平面図はもちろん、子供の動線や、計画上のポイントや技術面のポイントまで詳細に記されているため、設計プロセスを順序立てて学ぶことができます。中でも墨田区の「小梅保育園」や港区の「まちの保育園 六本木」など、都心部にありながら、子供たちの自主性をのびのびと育てる空間づくりには、納得のアイデアが満載です。保育園・幼稚園・こども園の設計手法について実務者、設計者、研究者の英知が結集された本書。よりよい保育施設の実現を目指す人は必読です。