『ピラミッド 最新科学で古代遺跡の謎を解く』
古代エジプト文明を象徴する建造物、ピラミッド。近年ではドローンで3D計測が開始されたり、宇宙船による透視調査で「巨大空間」が見つかったり、はたまた最古のパピルスが発見されたりと、古代遺跡の研究は次々と更新されています。著書である河江氏も、考古学的知見と3D解析という最先端技術を掛け合わせたアプローチで解明に挑んでいる、エジプト考古学者の一人。本書はそんな最新データと調査技術を紹介しながら、古代エジプト研究の最前線をまとめた一冊です。第一部「どのようにピラミッドを作ったか」、第二部「なぜピラミッドを作ったか」、第三部「誰がピラミッドを作ったのか」の3部構成になっており、「なぜ」「どのように」作ったのかという建造物としての視点はもちろん、建造に従事した「人間」にも焦点を当てている点が大きな特徴です。なかにはピラミッド時代に食べられていたパンのレシピの復元に挑む様子を記した章も。ちなみに本書を読むと分かりますが、「ピラミッドは奴隷によって建てられた」という話は大間違いとのこと。もちろん宇宙人とのつながりといった荒唐無稽な説も“大うそ”です。最新研究の結果を踏まえた上で改めてピラミッドの写真を見てみると、純粋に建造物としてのすごさ、ロマンを抱きます。どんな知識でもアップデートが必要。本書をじっくり読み込んで、新たなピラミッドの姿をイメージしてみませんか。
『世界のピラミッド Wonderland』
「ピラミッドがある場所は?」と聞かれると、エジプトと答える人が大半だと思います。しかし実はピラミッドは、アジアやヨーロッパ、メソアメリカにも存在しています。本書はピラミッドを“世界各地に鎮まる「古代の四角錐の石造建築」”と定義し、それらの発掘、研究などに携わるエキスパートを集めて構成した世界のピラミッド図鑑です。「エジプト編」では、エジプト最古のピラミッドであるネチェリケト王のピラミッドや、高さ90mを超す巨大なスネフェル王のピラミッドなどを紹介。迫力ある全体写真はもちろん、周壁や内部、発見された石製容器などの写真も充実しており、目で一つ一つを確認しながら理解を深めていくことができます。またピラミッドの構造的な話のほか、「建造場所の選定」や「ピラミッド建造に使用される石灰岩の砕石方法」と幅広い内容についても記されていて、読み物として楽しむことができます。掲載されているピラミッドの数はエジプト編がもっとも多いものの、「テオティワカン編」の月のピラミッドや、「ヨーロッパ編」のエリニコのピラミッド、そして「ボロドゥール編」で紹介されている大建築ボロドゥールもまた、見応え十分。特に500体以上の仏像が配置された、世界的にも類を見ない段台ピラミッド状の大建築ボロドゥールは、思わず息をのんでしまうほどの迫力があります。巻末には著者による「ピラミッド調査の歴史」「エジプト文字とメロエ文字」のコラムも収載。実際にピラミッドを訪れたくなること間違いなしの一冊です。