『フィギュール彩83 ショッピングモールの社会史』
人や物の集まる「場」であり、いまや巨大化・エンターテインメント化するショッピングモール。本書は、そのショッピングモールの歴史と建築様式の変遷について、成り立ちから現在までをひもとく初の通史です。著者いわく、現代の高度消費社会において最も効率的に人々の消費欲望を喚起させ、充足させる装置であるショッピングモールは、20世紀初頭にアメリカの郊外で生まれ、その後発展していきました。「第1章 ショッピングセンターの萌芽」「第2章 商業施設の郊外拡張とショッピングセンター」「第3章 モールの神様ビクター・グルーエン」「第4章 七〇年代以降のショッピングセンター」「第5章 日本のショッピングセンター史」「第6章 ショッピングモール時代の終わりとはじまり」の全6章を通じて、建築様式、立地、業態、コンセプトとさまざまな変化・進化を遂げたショッピングモールのこれまでと今を、モータリゼーションなど時代背景との関わりも含めて紹介しています。ちなみに第3章で取り上げられているビクター・グルーエンは、“ショッピングセンターの父”と呼ばれているウィーン出身の建築家。天候を気にすることなく、快適な空調や環境の下で買い物を行うことができる「エンクローズ型モール」を近代型ショッピングセンターで初めて採用した人です。こうした立役者の存在にスポットを当てている点も読みどころの一つでしょう。本書でショッピングモールの歴史を通覧することは、次代の社会の彩り、にぎわいをつくる上でも、きっと役立つはずです。
『世界の夢のショッピングモール&デパート』
子どもから大人まであらゆるエンターテインメントを楽しめる「遊べるショッピングモール」から、都市と共に進化を続ける「歴史ある老舗百貨店」まで、世界各地の夢のような商業施設を美しい写真と共に解説した一冊です。冒頭を飾るのはフランス・パリのオスマン通りにある「ギャラリー・ラファイエット」の本店。バルコニーが囲む吹き抜けに架かる丸屋根と、クーポールのステンドグラスは1912年の改装時に設置されたもの。現在は歴史的建造物に指定されています。パリでステンドグラスが特徴的なショッピングモールといえば、同じくオスマン通りにある「プランタン」本店。ステンドグラスの他、ガラスと鉄骨の構造、クーポール、モザイク画など建築物としての見どころが多いショッピングモールです。また本書には思わず目を奪われるようなユニークな形状のショッピングモールも。その中でも特筆すべきはスペイン・セビリアのエンカルナシオン広場にある複合施設「メトロポール・パラソル」。木材を格子状にかみ合わせたパラソルは、街中にある教会のヴォールトや広場の古木から発想を得たと解説されています。そして世界最大級モールである「ドバイ・モール」も登場。ゴージャスさもさることながら、分かりやすい動線、ビジュアルの統一感やゾーンごとの特色付け、駐車場のアクセス面など、一つの街造りのように全体が計画されている様子には大変感心させられます。きらびやかでエンターテインメント性にあふれたショッピングモールの写真集は、眺めているだけで心が沸き立ちます。