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今月のオススメの一冊

多文化共生

『芝園団地に住んでいます 住民の半分が外国人になったとき何が起きるか』

芝園団地に住んでいます 住民の半分が外国人になったとき何が起きるか芝園団地は1978年に日本住宅公団(現在のUR都市機構)が建てた約5000人が住む賃貸住宅です。1990年代から外国人入居者が増加。2015年11月には、芝園団地がほぼ全域を占める川口市芝園町の人口は、初めて外国人住民が日本人を上回りました。そんな芝園団地で暮らす外国人約2500人の大半が中国人です。インターネット上には、「外国人住民が増え、ごみや騒音などのトラブルが絶えない“荒れた”団地」という書き込みが見られるなど、あまりいいイメージのなかった芝園団地に、2017年に引っ越してきたのが新聞記者の著者。日本人と外国人が同じ場所で暮らすとき、何が起きるのか。住民には、どのような感情が生まれるのか。そこで起きること、芽生える感情に対して、どうすればいいのか。本書は、そんなことを問いかけながら芝園団地で暮らす、一人の住民の記録です。芝園団地をはじめとする外国人集住地域に関する報道や研究は少なくない中、本書の大きな特徴といえるのが、外国人住民が増えた地域で暮らす日本人の「感情」に焦点を当て、掘り下げたところでしょう。例えば、夏に開かれる「ふるさと祭り」の場面で。ごみ置き場を巡る生活トラブルの場面で。日本人住民の間に芽生える「もやもや感」と、もやもや感を抱えながらも見えない壁を乗り越えようとする人々の姿がリアルに描かれています。芝園団地を巡る葛藤と努力、そして一筋の希望を記したノンフィクション。多文化共生社会を迎えようとする今こそ、読んでおきたい一冊です。

『芝園団地に住んでいます 住民の半分が外国人になったとき何が起きるか』 『芝園団地に住んでいます 住民の半分が外国人になったとき何が起きるか』

『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』

ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー著者は1996年から英国ブライトンで暮らすライター・コラムニスト。本書は、そんな著者の一人息子の日常を描いた現在進行形のノンフィクションです。大人の凝り固まった常識を、子どもたちが軽々と飛び越えていくその様子に多くの読者が感動。八重洲本大賞を皮切りに数々の賞を受賞し、「一生モノの課題図書」と呼ばれるほどの大ヒット作品となりました。本書の主人公は、人種も貧富もごちゃ混ぜのイカした「元・底辺中学校」に通う優等生の「ぼく」。ぼくは、お父さんはアイルランド人、お母さんは日本人なので、この学校では少数派です。しかし、学校には他にも、人種差別丸出しの美少年や、アフリカから来たばかりの少女、ジェンダーに悩むサッカー小僧と、異なる背景を持つ学生がいっぱい通っています。でも、みんなぼくの大切な友達です。時には貧富の差でギスギスしたり、アイデンティティーに悩んだり。何が正しいのか。正しければ何でもいいのか。生きていく上で本当に大切なことは何か。世界の縮図のような日常を、思春期真っただ中のぼくと「パンクな母ちゃん」である著者が、共に考え、共に悩み、乗り越えていきます。事件続きの日常の中で成長していく親子の姿に、最後はホロリと涙がこぼれること必至です。親子で多文化共生社会について考えるきっかけにしたい、等身大ノンフィクションです。

『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』

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