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今月のオススメの一冊

ファンタジーと住まい

大魔法使いクレストマンシー 魔法の館にやとわれて

変な家山麓の町に暮らす12歳の少年コンラッドは、魔術師である叔父から「高地の貴族の館にいるある人物を倒さないかぎり、おまえの命は長くない」と言われ、その人物を探すために魔法が渦巻く館に従僕として奉公に出ることに。同じ時に従僕として雇われた少し年上のクリストファーもまた、別の目的を持って館に来ていました。2人は館の屋根裏で、異世界の不思議な塔に通じる扉を見つけてー。本書は、宮崎駿監督によりアニメ化された『ハウルの動く城』の原作者であり、「ファンタジーの女王」と評価の高い著者の代表連作「大魔法使いクレストマンシー」の一作。大魔使いクレストマンシーの若き日の冒険と恋を、年下の友人の目から描いたシリーズの中でも異色作です。本書の魅力、それはやはり摩訶不思議な館にスパイのように潜入した2人が謎を解き明かしていくワクワク感でしょう。謎に立ち向かう少年たちが本当に生き生きと描かれていて、友情が育まれていく様子や、見習いとして成長していく様も楽しめます。館で次々と起こる不可思議な出来事にハラハラの連続、気持ちが休まらないまま、あっという間にラストの謎にたどり着くのですが、その結末のどんでん返しにさらに驚かされます。伏線の回収もお見事。現実に疲れたら、本書を開いて「魔法の館」へぜひ。2人の少年が心躍る魔法の世界に誘ってくれるでしょう。

『大魔法使いクレストマンシー 魔法の館にやとわれて』 『変な家』
  • ■発行所:徳間書店
  • ■著者:ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
  • ■訳者:田中薫子
  • ■参考サイト:徳間書店ウェブサイト
  • ■価格:¥1,800円+税


『ジブリの立体建造物展 図録<復刻版>』

世界の不思議な家、楽しい家1985年の創立以来、多くのアニメーション作品を世に送り出してきたスタジオジブリ。作品中にはドラマが起こる舞台として、たくさんの「建造物」が登場します。本書は、そんなジブリの建造物の魅力を掘り下げるべく、2014年から2018年にかけて、東京都、長野県、愛知県、熊本県、大阪府にて開催された「ジブリの立体建造物展」の公式図録の復刻版です。『風の谷のナウシカ』から『思い出のマーニー』まで、19作品の背景画、イメージボード、美術ボード、場面スチールなど、約380点の図版を掲載しています。『千と千尋の神隠し』でメインの舞台となる湯屋「油屋」、『コクリコ坂から』に登場する学校の部室棟「カルチェラタン」、『となりのトトロ』でサツキとメイが暮らす「草壁家」、『天空の城ラピュタ』の空に浮かぶ城「ラピュタの建築と庭園」など、個性豊かな建造物の数々。それを、まるで現実の建物を見るように解説するのは、展覧会の監修を務めた建築家の藤森照信氏。例えば藤森氏は、『千と千尋の神隠し』の「油屋」は、「いわゆる“擬洋風建築”と呼ばれるもので、明治時代に日本の大工たちがつくった洋風建築です」と解説しています。本書の最後には、藤森氏と宮崎駿監督の映画と建築を巡る対談を収載。ジブリ建築の源に触れられる一冊は、ジブリファンのみならず、建築ファンの心も弾ませてくれます。

『ジブリの立体建造物展 図録<復刻版>』『ジブリの立体建造物展 図録<復刻版>』

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