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今月のオススメの一冊

美術館の建築

『世界の廃墟』

『世界の廃墟』 90年代に日本で“廃墟マニア”という言葉が生まれるほどブームとなった「廃墟」。近年、ヨーロッパを中心に、「都市探検(アーバン・エクスプロレーション)」もしくは「プレイス・ハッキング」と呼ばれる新たな“廃墟ブーム”が巻き起こっています。これは、行政政策などの失敗によって生まれた世界各地の廃墟に実際に赴き、権力者の失態や、こうした“負の遺産”特有の美しさをウェブ上で次々と公開してゆくサブカルチャー運動のこと。本書を監修したのは、世界中の新奇な場所・物・人を取材した写真集、「奇界遺産」「奇界遺産2」がベストセラーになっているフォトグラファー、佐藤健寿氏。佐藤氏の全面協力の元、世界各地の都市探検家たちに呼び掛け、提供された写真を多数収録。佐藤氏、自身の作品も収録されています。例えばブルガリアの首都ソフィアから東に200キロメートル、バズルージャ山の頂上部に建つ奇妙な「ブルガリア共産党ホール」や、アフリカ南西部、ナミビアの沿岸地帯に位置する砂漠に埋もれた街「コールマンスコップ」、アリゾナ州南東部のデイヴィス・モンサン空軍基地に隣接する「第309航空整備再生場」通称“ボーンヤード”など、都市探検家たちの活動によってこの1〜2年で急速にメジャーになった廃墟を一望できる、日本で初めて“世界の廃墟”を集めた写真集です。

『世界の廃墟』 『世界の廃墟』

『美しい日本の廃墟 いま見たい日本の廃墟たち』

『美しい日本の廃墟 いま見たい日本の廃墟たち』全編カラー写真で構成された本書は、まるで映画のワンシーンを切り取った美しい写真集のよう。「学校、病院その他公共施設の廃墟」「ホテル、観光レジャー施設の廃墟」「炭鉱・鉱山の廃墟」「集落・集合住宅の廃墟」「工場・発電所の廃墟」の全5編にわたり、日本の美しい廃墟を紹介しています。古びた机や椅子がぽつんと残された学校や、医薬品や手術道具がいまだに残されている病院、さびた鉄柵に囲われたメリーゴーラウンドなど、誰もいないひっそりとした空間ながらも、確実にかつて人がいた気配を感じさせる不思議な写真の数々に、思わず見入ってしまうことでしょう。例えば、炭鉱全盛期に栄華を誇った北海道の羽幌炭鉱周辺。この跡地に残されたのは当時、近代的といわれたコンクリート造りのアパートです。今や役目を終え、ただのコンクリートの塊となった建物ですが、じっと写真を眺めれば、規則正しく並んだ窓からかつての温かな家族の風景がよみがえってくるようです。廃墟がはらんだ“光と影”に触れることによって、ノスタルジアを感じる―。それが、人々が廃墟に魅了される理由なのかもしれません。本書を片手に、廃墟を巡る旅に出てみるのはいかがでしょうか?

『美しい日本の廃墟 いま見たい日本の廃墟たち』『美しい日本の廃墟 いま見たい日本の廃墟たち』

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